パンタシア学院図書は、アルカナで生まれた様々な記録や伝承を集め、学園生徒のみならず、アルカナに暮らす全ての人々がいつでも触れられるように管理しています。

【アルカナの地域】
 ・〈夜明けの平原〉アウロラ
 ・〈母なる大都市〉メトロポリス
 ・

【アルカナの伝承】
 ・世界の成り立ち
 ・アルカナの天使
 ・天使の子ども

♰パンタシア学院の創立にまつわる伝承♰

 アルカナ歴80年頃、〈母なる大都市〉メトロポリスに最初の学校を築いたのは、テラの孫であるエゲリアという娘であった。
 兄に王位を譲ったエゲリアは、精霊たちの言葉を受けて、アルカナの多くの人々が知識を共有できる場所を築く使命を授かった。

 エゲリアはパンタシア学院という学園を築き、アルカナの各地に存在していた高名な師を招いて、アルカナに散らばっていた膨大な知識をまとめようとした。
 テラの孫娘の誘いとあって、多くの師がそれに賛同した。だが、〈鱗の都〉サラキアに暮らす竜たちは尊大だった為、エゲリアが力を貸すに値する人物か疑ったという。

 エゲリアは彼らの信頼を得るために、自らの足で当時荒れ地だったアウロラを抜け、恐ろしい怪物たちの領地をひっそりと通り抜けてサラキアへと向かった。
 サラキアを統べる竜王は、エゲリアの訪問に興味を抱いた。しかし、簡単に認めるわけにはいかないとして、彼女に竜の試練と題してあらゆる無茶難題を示した。

 天使の末裔とはいえ、若き乙女でもあったエゲリアは戸惑った。
 しかし、その試練に挑み、時には命を落としそうになりながらも克服していったという。
 竜王の理不尽な言葉にもエゲリアはめげず、竜たちに伝わる知識を分けてもらえるように願い続けた。

 これ以上の試練は無駄だと悟った竜王は、エゲリアの知恵を試すとして目隠しで彼女の視界を奪うと、竜の民でさえも恐れる魔窟へと彼女を閉じ込めてしまった。
 しかし、エゲリアは目隠しを解くと、魔窟に残された僅かな手掛かりをもとに冷静に外を目指した。
 魔窟の主が彼女の命を狙ったが、正面から戦うのではなく、知恵を絞って戦いを回避し続け、外を目指した。
 そして、大した傷もなく外に出たために、竜王は驚いたらしい。王を支える賢者や、竜の民たちの大半もエゲリアの生還に感心したため、竜王はとうとう力を貸す許可を与えた。

 これにより、パンタシア学院には天使の降臨前より続く竜たちの高度な知識がもたらされるようになり、ますますアルカナの人々の生活は向上したという。
 とくに竜の民から抜け落ちる古い鱗を利用した武器の製造は革命的で、それまで、ヴィクトリアが死闘してやっと勝てたほどの怪物たちにさえ、ごく一般の人々であっても敵うようになった。

 テラの子ども時代ほどには理不尽な破壊と殺戮に怯えずに済むようになって以降、アルカナ全体の文明は今も発展を続けている。
 エゲリアの没後3000年ほどのあらゆる学術は、今もパンタシア学院に集っている。